介護職はその仕事柄、主に腰痛などの体の不調を起こしやすい職種です。
腰痛で思うように仕事ができなければ、他のスタッフに手伝ってもらったり、シフトに穴を空けてしまったり…
周囲のスタッフに負担をかけてしまって気を遣ってしまいますよね…
ひどい場合には、休職や退職を余儀なくされるケースも少なくありません。
今回の記事では、腰痛で介護職を辞めたいと考えている方に向けて対処法を解説します。
体の不調に悩まされていて、介護職を続けるのが難しいと考えている方はぜひ参考にしてください。
介護職が腰痛を起こしやすい原因とは
腰痛の原因には以下のようなものが考えられます。
- ご利用者の移動介助・移乗介助
- 前屈みや中腰など腰に負担がかかる姿勢での介護
- 長時間同じ姿勢とる
- 長時間の立ち仕事
- 不規則な生活、過重労働で疲労が溜まる
介護職の日頃の就労環境を考えると、腰痛を引き起こしてしまうのは仕方のないことかもしれません。
介護職が腰痛を起こさないようにする方法
介護職の腰痛は職業病とも言えます。一度痛めてしまっても、何度も繰り返してしまうので腰に爆弾を抱えながら仕事をされている方も多いでしょう。
腰痛を起こしやすいことが事前に分かっているのであれば、そのリスクを回避するための努力も必要です。
介護職をできる限り長く続けられるための工夫をしながら仕事を続けるようにしましょう。
毎日ストレッチをする
毎日のストレッチは腰痛予防に効果的です。
ストレッチをして筋肉を伸ばすことで、血液やリンパの流れがよくなります。体の柔軟性がアップし、関節可動域も広がります。筋力が弱い方や体が硬い方はとくに腰痛を引き起こしやすいのでストレッチがおすすめです。
ストレッチには、腰痛予防だけでなく疲労回復やリラックス効果も期待できます。お風呂で体をしっかりと温め、入浴後や就寝前などに継続して行いましょう。
適度な運動を継続する
日頃から適度な運動を心がけるのも大切です。
コアトレーニングで体幹を強化し、柔軟性を向上させる運動がとくにおすすめです。ヨガ・ピラティス・水泳・ウォーキングなどの運動は、腰痛予防に効果的とされています。
ただし、腰痛がひどい場合には医師や専門家に相談してから取り組みましょう。自身の体調に合ったものを選び、適度な運動を継続することが大切です。
楽しんで続けられるスポーツがいいかも!
ボディメカニクスを利用する
ボディメカニクスとは人間が動作する時の力学的観点を活用した技術です。最小限の力で介護を行うことができ、介護する側もされる側も体への負担が軽減します。
ボディメカニクスを正しく活用するためには8つの原則を理解するのがポイントです。
- 支持基底面積を広くとる
- 重心を低く保つ
- 被介護者と重心を近づける
- 被介護者の体を小さくまとめる
- 腕の力だけでなく身体全体を使う
- 水平移動を行う
- 押さずに手前にひく動作を意識する
- てこの原理を活用する
例えば、時間がないのでベッドの高さを調節せず介助をしたり、しゃがむのがめんどくさいからといって無理に腰を曲げて介助してしまったりすることも腰痛の原因になります。
介護者が不自然な体勢で介助したり、力任せに介助したりするのではなく体の動きの原理原則を理解した介助を行うことが大切です。
福祉用具を活用する
腰痛を引き起こさないためには、福祉用具の活用も有効です。手すりや滑り止めマットなどを活用し、できるだけご自身の力を活用して動いてもらうことで自立支援を促し介護者の負担も軽減しましょう。
身体が動きにくい方や全介助の方などは、介護者が全面的に介助しなくてはなりません。そのような場面では、介護者の負担を極力押さえるような福祉用具の活用も必要です。
介護者の負担を軽減する福祉用具には、以下のようなものがあります。
リフト
リフトは、スリングという布やメッシュ製のシートに被介護者を乗せて、包み込むようにして抱えあげて移乗介助する福祉用具です。入浴時やベッドと車椅子の移乗時に利用できます。
スライディングボード
スライディングボードは、ベッドと車いすの間を移乗介助するときに使う、木製やプラスティック製のボードです。ボードにお尻を乗せて、すべらせるようにして移動できます。
スライディングシート
スライディングシートは、身体の重さのかかるところの下に敷き、身体をすべらせながら移動させるシートです。ベッドの上下や左右に身体を移動させたいときにスムーズに動かすことが可能です。
入浴用補助ベルト
入浴用補助ベルトは被介護者の身体に巻いて使用します。入浴時は裸で濡れているので身体が支えにくい状態です。入浴補助ベルトがあれば身体が支えやすく転倒のリスクが軽減します。
腰痛で介護職が続けられない時の対処法
腰痛が起きてしまって、どうしても介護の仕事が続けられないときはどうしたら良いのでしょうか。
休職して治療に専念する
腰に激痛が走っている状態で仕事を続けるのは困難です。今の職場を辞めたくない場合は、思い切って治療に専念する選択肢もあります。
腰痛を抱えたまま仕事を続けていれば、悪化するばかりで一向によくならない場合もあります。周囲のスタッフに助けてもらわなければならないので、精神的にもきつくなってしまうこともあるでしょう。
身体の負担が少ない部署に配属を変更してもらったり、別の仕事を与えてもらえたりする場合もあるかもしれません。
一度、職場に相談してみることをおすすめします!
体力的な負担が少ない施設に転職する
今の職場の業務内容がハードなのであれば、転職を検討するのも良いでしょう。施設により、ボディメカニクスの指導をしたり、介護者に負担をかけない設備や福祉用具を充実させたりして、腰痛対策に力を入れている職場もあります。
同じ介護職でも体力的負担が少ない職場に転職するのも一つです。サービス付き高齢者向け住宅やケアハウスなど、自立されている方が多い施設に転職すれば、介助量が減るので負担が軽減します。
また、夜勤がない職場もおすすめです。施設介護でも夜勤帯の勤務がない雇用形態を選択することも可能です。しかし、正社員であれば夜勤をすることが条件のところもあるので、正社員で働きたい方は確認が必要です。
在宅介護サービスに転職する
施設介護にこだわらないのであれば、在宅介護サービスを検討してみるのも良いでしょう。在宅介護サービスで介護職が働ける職場には、デイサービスやデイケア、訪問介護サービスなどが代表的です。
ただし、在宅介護でも介護度の重い方もいるのでハードな場合もあります。通所系サービスでは送迎サービスや入浴介助などの身体介護を行います。訪問介護サービスでも、介護度の重い方が自宅で生活されていますし、家屋の状況により介護がしにくい環境の方もいます。
必ず楽になるわけではないので、よく見極めて決めましょう!
介護職が続けられない方のおすすめの転職先
介護職が続けられない場合は、別の職種に転職するのも一つです。せっかく、介護職を続けてきたのであれば、介護の経験を活かせる職場がおすすめです。
ケアマネジャーの資格を取る
ケアマネジャーの資格を取れば、これまでの介護の経験を活かして転職できます。
施設ケアマネの場合は、ケアマネ業務と介護業務を兼務することが多いので完全には介護職から離れられないケースもあります。腰痛がひどく、少しでも身体介護が難しい場合は居宅のケアマネジャーに転職すると良いでしょう。
ただし、ケアマネジャーは資格がないと出来ない仕事です。すぐに転職できないので計画的に資格を取得しておくことをおすすめします。
介護事務の仕事に転職する
介護事務は介護の経験が活かせる仕事です。
事務の仕事でも、ご利用者やご家族の電話対応・来客の対応・事務仕事のサポートなどは、介護の経験者であればスムーズに行えることも多いでしょう。
介護事務に必要な「介護保険制度」や「介護報酬請求」についての知識は、介護職の経験者でも理解が難しいことも多いですが、全く未経験よりはアドバンテージがあります。
体力を使う仕事が難しいのでデスクワークを考えている方であれば、一般企業の事務ではなく介護事務への転職を考えてみるのもおすすめです。
介護施設の営業職に転職する
介護施設の営業職は、介護職経験者は非常に有利です。
介護施設の営業職は入居者を集めるための営業を行う仕事で、入居を考えている方に施設の説明をしたり施設案内をしたりします。
ただ施設の良いところをアピールして入居してもらえばよいのではなく、その方のお体の状態や悩み、ご要望などを聞き取って適切な施設へご案内しなければなりません。
介護職の経験があれば、入居検討者が気になる施設での生活についても詳しく説明ができます。ご利用者やご家族の悩みや心配事も、細かいところまで汲み取ることが可能です。
人とのコミュニケーションが得意な方は、営業職に向いているかもしれません。
腰痛で仕事を辞めたい場合は転職も
今回の記事では、腰痛がつらくて介護職を辞めたい方に向けて解説しました。
仕事が続けられない時は、無理をしてしまうと悪化してしまう一方です。日常生活にまで支障をきたしてしまう恐れもあります。
介護職を続けるのが難しいと感じたら、休職するか体力的負担の少ない施設や職種に転職することをおすすめします。
無理のない範囲で続けられるように早めに検討しましょう。