「介護の仕事は好きだけど、身体介護がしんどくなってきた…」
「介護の経験を活かしながら、違う働き方をしてみたい」
そんなふうに感じている方に知ってほしいのが、福祉用具専門相談員という仕事です。
私はケアマネとして働いていたとき、福祉用具専門相談員の方と頻繁にやり取りをしていました。利用者さんの生活を「もの」の面から支える姿を見て、「介護の経験がこんなふうに活きるんだ」と感じたことを覚えています。
ただ、「夜勤がないから楽そう」というイメージだけで転職すると、力仕事や営業の多さに驚くかもしれません。この記事では、ケアマネとして相談員さんと一緒に仕事をしてきた立場から、良い面もきつい面も正直にお伝えします。
この記事でわかること
- 福祉用具専門相談員の仕事内容(2024年度からの「レンタルか購入か」の提案も)
- 元ケアマネから見た「頼りになる相談員」の共通点
- 給料の実際(厚生労働省のデータ)と、介護職との違い
- 資格の取り方(介護福祉士なら講習なしで働ける)
- きついと言われる理由と、面接で確認したいこと
それでは、詳しく見ていきましょう。
福祉用具専門相談員とは?仕事内容をわかりやすく解説

福祉用具専門相談員は、介護が必要な方に合った福祉用具を選び、使い方まで支える専門職です。介護保険で福祉用具のレンタル・販売を行う事業所には、福祉用具専門相談員を2名以上置くことが義務づけられています。
参考:厚生労働省 職業情報提供サイト(job tag)「福祉用具専門相談員」
このセクションでは、以下のポイントをお伝えします。
- 利用者に合った福祉用具を選定・提案する
- 福祉用具サービス計画を作成する
- 納品・適合調整・使い方の説明をする
- 定期的なモニタリングとメンテナンス
- 2024年度からは「レンタルか購入か」の提案も
- ケアマネジャーへの営業活動
それでは、順番に見ていきましょう。
利用者に合った福祉用具を選定・提案する
福祉用具専門相談員の仕事の中心は、利用者さん一人ひとりに合った福祉用具を選ぶことです。
ケアマネジャーや利用者さんから相談を受けたら、まずは身体の状態や住環境をアセスメントします。
- 身体の状態や認知機能、生活スタイルを総合的に把握する
- 自宅の間取りや段差、動線なども考慮して最適な用具を提案する
- 必要に応じて医療スタッフや介護スタッフの意見も取り入れる
介護保険で利用できる福祉用具には、車いすや特殊寝台(介護ベッド)などのレンタル対象品目と、入浴補助用具やポータブルトイレなどの購入対象品目があります。
利用者さんの介護度によって利用できる品目が決まるため、制度の知識も欠かせません。
福祉用具サービス計画を作成する
福祉用具をレンタル・販売する際には、「福祉用具貸与計画」(販売の場合は「特定福祉用具販売計画」)の作成が義務づけられています。現場では、まとめて「福祉用具サービス計画」と呼ばれることが多いです。
ケアマネジャーが作成したケアプランをもとに、福祉用具の具体的な利用計画を立てる作業です。
- ケアプランの「生活上の目標」にもとづいた計画を作成する
- なぜその福祉用具が必要かを明確にする
- 計画書を利用者さんに説明し、同意を得て交付する
私がケアマネとして働いていた頃、しっかりした計画書を作る福祉用具専門相談員は本当に頼りになりました。
計画書の質が、利用者さんの生活の質に直結します。
納品・適合調整・使い方の説明をする
選定した福祉用具を利用者さんの自宅に届け、身体や住環境に合わせて調整するのも大切な仕事です。
車いすの座面の高さや、ベッドの位置など、ほんの少しの調整で使いやすさが大きく変わります。
- 福祉用具の搬入・設置・組み立てを行う
- 利用者さんの体格や動作に合わせて細かく適合調整する
- 安全に使えるよう、使い方を丁寧に説明する
利用者さんやご家族が安心して使えるよう、わかりやすく伝えることが求められます。
定期的なモニタリングとメンテナンス
福祉用具は一度納品したら終わりではありません。定期的に利用者さん宅を訪問し、使用状況を確認することが義務づけられています。2024年度からは、モニタリングの結果を記録してケアマネジャーに渡すことも決まりました。
身体の状態や生活環境は時間とともに変わるため、その都度最適な用具を見直す必要があります。
- 福祉用具に不具合がないかを点検・メンテナンスする
- 正しく安全に使えているかを確認する
- 状態の変化があればケアマネジャーに報告し、用具の変更を提案する
モニタリングは利用者さんとの信頼関係を深める場でもあり、ここで小さな変化に気づけるかどうかがプロとしての力量にかかっています。
2024年度からは「レンタルか購入か」の提案も
2024年4月から、固定用スロープ・歩行器(歩行車を除く)・単点杖(松葉づえを除く)・多点杖の4つは、レンタルと購入のどちらかを選べるようになりました。
福祉用具専門相談員は、それぞれのメリット・デメリットを利用者さんに説明し、選ぶための材料を伝える役目を担います。
- 長く使うなら購入、状態が変わりやすいならレンタル、といった見通しを伝える
- 医師やリハビリ職など、多職種の意見も踏まえて提案する
- レンタルを選んだ場合は、利用開始から6か月以内に少なくとも1回モニタリングし、続ける必要があるかを検討する
参考:厚生労働省「一部の福祉用具に係る貸与と販売の選択制の導入に関する調査研究事業(案)」、厚生労働省老健局「令和6年度介護報酬改定の主な事項について」(大阪市掲載)
ケアマネジャーへの営業活動
福祉用具専門相談員には、営業活動も重要な業務の一つです。
福祉用具は利用者さんが直接購入するのではなく、ケアプランを通じて提供されるため、ケアマネジャーとのつながりが仕事の入り口になります。
- 居宅介護支援事業所を定期的に訪問して関係をつくる
- 新しい福祉用具の情報を共有し、提案につなげる
- 新規の事業所への挨拶回りも大切な業務
フットワーク軽く対応する人ほど、ケアマネジャーからの信頼を得やすい傾向があります。
元ケアマネが見ていた「頼りになる福祉用具専門相談員」の共通点

ケアマネの仕事では、福祉用具専門相談員さんと毎週のように連絡を取り合っていました。ここでは、ケアマネの側から見て「この人にお願いしたい」と思えた相談員さんの共通点をお伝えします。
転職後にどんな相談員を目指せばいいかの参考にしてみてください。
連絡が早く、まず自宅を見に行ってくれる
退院が急に決まり、数日のうちにベッドと手すりが必要になったことがありました。そのとき、電話をしたその日のうちに自宅を見に行ってくれた相談員さんがいて、本当に助かったのを覚えています。
ケアマネは多くの利用者さんを担当しているので、「確認しました」「見てきました」と早く返してくれる人には、自然と次の相談もしたくなります。
用具を「足す」だけでなく「外す」提案もできる
信頼できる相談員さんは、状態が良くなった利用者さんに「この手すりは、もう外しても大丈夫かもしれません」と言える人でした。レンタルが減れば売上は下がりますが、それでも利用者さんにとって必要かどうかで考えてくれる姿勢に、ケアマネとして安心感がありました。
用具が多すぎると、かえって動きにくくなったり、費用の負担が増えたりします。「必要な分だけ」を提案できることも、プロの大切な仕事です。
「用具」ではなく「暮らし方」を見ている
介護現場の経験がある相談員さんは、「夜中にトイレへ行くときは、どちら側から起き上がりますか?」といった、暮らしの細かい部分まで聞いてくれることが多かったです。その一言で、ベッドの向きや手すりの位置がガラッと変わることもありました。
営業トークがうまい人より、毎日の対応がていねいな人のほうが、ケアマネからの依頼は自然と増えていました。介護職として利用者さんに向き合ってきた方なら、きっとこの働き方ができると思います。
介護職から福祉用具専門相談員に転職する4つのメリット

介護現場で積み重ねた経験は、福祉用具専門相談員の仕事で大きな強みになります。特に介護福祉士を持っている方は、資格の面でも有利です。
このセクションでは、以下のポイントをお伝えします。
- 介護現場の経験がそのまま強みになる
- 介護福祉士なら講習なしで働ける
- 夜勤なし・日勤中心の働き方ができる
- 求人が多く、需要が安定している
それでは、順番に見ていきましょう。
介護現場の経験がそのまま強みになる
介護職として現場で培ってきた経験は、福祉用具専門相談員の仕事に直結します。
高齢者の心身の状態を理解し、日常生活の困りごとを把握する力は、未経験者にはない大きなアドバンテージです。
- 利用者さんの身体状態や動作のくせを見抜く「観察力」が活きる
- 介護保険制度の知識があるため、提案がスムーズにできる
- ケアマネジャーとの連携経験があり、現場のニーズを理解している
私がケアマネだったとき、介護現場を経験している福祉用具専門相談員の方と一緒に仕事をする機会がありましたが、利用者さんの「ちょっとした困りごと」に気づくのが本当に早いと感じました。具体的にどんなスキルが活きるかは、後ほど詳しく紹介します。
介護福祉士なら講習なしで働ける
これは大きなメリットです。
介護福祉士の資格を持っている方は、福祉用具専門相談員の指定講習(合計53時間)を受けなくても、そのまま福祉用具専門相談員として働けます。
つまり、講習にかかる時間もお金もかけずに転職できるということです。
- 講習の受講期間(7〜8日程度)を待たずに、すぐ転職活動を始められる
- 受講料がかからないため、金銭的なハードルも低い
- 介護福祉士以外にも免除対象の資格がある(詳しくは後述)
「資格を取り直さなきゃいけないのかな」と不安に感じていた方も多いかもしれませんが、介護福祉士があればその心配はありません。
夜勤なし・日勤中心の働き方ができる
介護現場で夜勤が体力的にきついと感じている方にとって、福祉用具専門相談員は日勤中心の働き方ができるのが魅力です。厚生労働省のjob tagでも、朝から夕方までの勤務形態が多いと紹介されています。
私も介護職時代、夜勤明けにフラフラで帰宅していた日々がありました。
- 基本的に日勤帯(9時〜18時前後)の勤務が中心
- 入浴や排せつなどの身体介護からは離れられる
- 土日休みの事業所も多く、生活リズムが安定しやすい
ただし、搬入・設置時には力仕事が発生することや、急な対応で時間外になるケースもあります。この点は「きついと言われる理由」で詳しくお伝えします。
求人が多く、需要が安定している
福祉用具専門相談員は、ハローワークでの有効求人倍率が4.6倍(令和7年度)と、働き手が足りていない職種です。求職者1人に対して、4つ以上の求人がある計算になります。
在宅で暮らす高齢者が増えるなか、事業所ごとに2名以上の配置が義務づけられていることもあり、資格を持っている人材へのニーズは安定しています。
- 高齢化にともない、在宅介護を選ぶ方が増えている
- 福祉用具の技術革新が進み、扱える商品の幅が広がっている
- 配置義務があるため、一定の求人数が維持されやすい
参考:厚生労働省 職業情報提供サイト(job tag)「福祉用具専門相談員」(2026年10月13日確認)
福祉用具専門相談員の給料は?介護職と比べて上がるのか

転職を考えるうえで、いちばん気になるのが給料ですよね。ここでは厚生労働省のデータをもとに、福祉用具専門相談員の給料と、介護職から転職するときに注意したい点をまとめます。
結論からいうと、平均では介護職と同じくらいか、やや高めです。ただし、夜勤手当や処遇改善の扱いによっては、手取りが下がる人もいます。
| 項目 | 福祉用具専門相談員 |
|---|---|
| 平均年収 | 402.7万円 |
| 平均年齢 | 43.4歳 |
| 月の労働時間 | 163時間 |
| ハローワーク求人の月給(令和7年度) | 24.4万円 |
| 有効求人倍率(令和7年度) | 4.6倍 |
一方、介護職員の賞与込みの月給は31.4万円(令和7年)で、12か月分にすると約377万円です。集計の方法が違うので単純には比べられませんが、ひとつの目安にはなります。
参考:厚生労働省「賃金構造基本統計調査による介護職員の賃金について」
夜勤手当がなくなる分をどう考えるか
施設で夜勤に入っていた方は、夜勤手当がなくなる分、月給が下がる可能性があります。月に4〜5回夜勤に入っていた方なら、その差は小さくありません。
- 営業成績に応じたインセンティブや営業手当が出る事業所もある
- 介護福祉士などの資格手当がつく場合がある
- 経験を積んで管理者やエリア責任者になれば、収入アップの可能性も
「夜勤がなくなって体が楽になる」ことと「月給が下がるかもしれない」ことを、両方てんびんにかけて考えるのがおすすめです。
福祉用具貸与は処遇改善加算の対象外
意外と知られていないのが、福祉用具貸与は「介護職員等処遇改善加算」の対象サービスではないという点です。
2026年6月の臨時改定で、処遇改善加算の対象は介護職員から介護に関わる職員全体へ広がりました。ただ、新たに対象に加わったサービスは訪問看護・訪問リハビリテーション・居宅介護支援・介護予防支援で、福祉用具貸与は含まれていません。
参考:さいたま市「令和8年度介護保険事業者集団指導 介護職員等処遇改善加算の注意点について」
介護職のまま働く人は、これからも処遇改善で給料が上がっていく可能性があります。転職するときは、求人票の基本給・手当の内訳と、賞与の実績を必ず確認しておきましょう。
※実際の給与は勤務地・事業所の規模・経験年数によって異なります。
介護職から福祉用具専門相談員への転職で活かせるスキル

「未経験の職種に転職して、本当にやっていけるのかな…」と不安に思う方もいるかもしれません。でも、介護職として毎日こなしてきたことの多くは、福祉用具専門相談員の仕事でそのまま使えます。
このセクションでは、以下のポイントをお伝えします。
- 高齢者の心身の状態を理解する力
- 介護保険制度の知識
- 利用者・家族とのコミュニケーション力
それでは、順番に見ていきましょう。
高齢者の心身の状態を理解する力
福祉用具を正しく選定するには、利用者さんの身体の状態や認知機能を的確に把握する必要があります。
これは、介護職として毎日利用者さんと接してきた方だからこそ持っている力です。
- 「この方は右半身にまひがあるから、左手で操作しやすい手すりがいい」といった判断ができる
- 認知症の方への対応経験があるため、安全面を考慮した用具選びができる
- 利用者さんのちょっとした体調変化や生活動作の変化に気づける
こうした「現場で培った観察力」は、教科書だけでは身につかない貴重なスキルです。
介護保険制度の知識
福祉用具の提供は介護保険制度のもとで行われます。利用者さんの介護度によって使える品目や限度額が異なるため、制度の理解は必須です。
介護職として日常的にケアプランや介護度のしくみに触れてきた方なら、この知識はすでに身についています。
- 介護度ごとの支給限度額や利用者負担の仕組みを理解している
- ケアプランとの連携がスムーズにできる
- 福祉用具以外のサービス(訪問介護・デイサービスなど)との併用も把握している
ケアマネジャーとのやり取りにおいても、現場の専門用語や制度の話がスムーズに通じることは大きな強みになります。
利用者・家族とのコミュニケーション力
福祉用具専門相談員は、利用者さん本人だけでなく、ご家族やケアマネジャーなど多くの関係者と連携する仕事です。
介護職として日々、利用者さんやご家族と接してきた経験は、そのままコミュニケーション力として活かせます。
- 高齢者やご家族の不安を受けとめ、わかりやすく説明する力がある
- 相手のペースに合わせた丁寧な対応ができる
- 多職種連携の経験があるため、チームで動くことに慣れている
「この人に相談してよかった」と思ってもらえるかどうかは、知識だけでなくコミュニケーション力にかかっています。
福祉用具専門相談員になるには?資格と講習の取り方

福祉用具専門相談員になるルートは、「指定講習を修了する」か「免除の対象になる国家資格を持っている」かの2つです。講習の時間は2025年度に見直されているので、古い情報に注意してください。
このセクションでは、以下のポイントをお伝えします。
- 福祉用具専門相談員指定講習の内容と費用
- 講習が免除になる8つの国家資格
それでは、順番に見ていきましょう。
福祉用具専門相談員指定講習の内容と費用
医療・介護系の国家資格を持っていない方は、都道府県が指定した「福祉用具専門相談員指定講習」を修了する必要があります。
講習の合計時間は、厚生労働省のカリキュラム見直しにより、2025年度から50時間から53時間に増えました。2026年度以降は、すべての講習が新しいカリキュラムで行われます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 講習時間 | 合計53時間(講義・演習)+修了評価 |
| 日数の例 | 7〜8日程度 |
| 費用の例 | 46,200円〜68,000円(税込・テキスト代込み) |
| 受講資格 | 制限なし(どなたでも可) |
| 修了要件 | 全科目の受講後、修了評価(筆記試験)に合格 |
- 介護保険制度、高齢者の医療・介護の基礎知識を幅広く学ぶ
- 福祉用具の種類や選び方、サービス計画の作成方法も含まれる
- オンラインと会場での受講を組み合わせた講習もある
- 開催日程は、都道府県のホームページや全国福祉用具専門相談員協会のサイトで探せる
参考:厚生労働省「福祉用具専門相談員の新たな指定講習カリキュラムの適用開始時期について」、沖縄県「福祉用具専門相談員情報」
介護職として働きながら受講している方も多いので、「まずは講習だけ受けておく」という選択肢もありますよ。
講習が免除になる8つの国家資格
以下の国家資格を持っている方は、指定講習を受けずに福祉用具専門相談員として働けます。
すでに医療・介護の専門知識を持っているとみなされるためです。
- 介護福祉士
- 看護師
- 准看護師
- 保健師
- 理学療法士
- 作業療法士
- 社会福祉士
- 義肢装具士
注意したいのは、介護職員初任者研修や実務者研修の修了だけでは免除にならないことです。初任者研修(旧ヘルパー2級)は以前は対象でしたが、2015年4月から外れています。
参考:山形県「福祉用具専門相談員の指定講習課程及び福祉用具専門相談員の要件の改正について」
介護職として介護福祉士を取得されている方なら、すぐに転職活動を始められます。講習の時間や費用をかけずにキャリアチェンジできるのは、大きなアドバンテージですね。
福祉用具専門相談員がきついと言われる4つの理由

「夜勤がないなら楽そう」と思われがちですが、福祉用具専門相談員にも大変な面はあります。転職してから後悔しないよう、きついと言われる理由を先に知っておきましょう。
このセクションでは、以下のポイントをお伝えします。
- 力仕事や搬入作業の負担
- 営業ノルマのプレッシャー
- 外回り・車の運転・急な依頼が多い
- 覚えることが多く学び続ける必要がある
それでは、順番に見ていきましょう。
力仕事や搬入作業の負担
福祉用具専門相談員がきついと言われる理由のひとつが、力仕事の多さです。
介護ベッドはマットレスやサイドレールを合わせるとかなりの重さになり、車いすやスロープの搬入・組み立て、レンタル終了後の回収や清掃も日常的にあります。
- エレベーターのないマンションや狭い住宅での搬入は特に大変
- 腰を痛めてしまう方もいるため、体のケアが欠かせない
- 搬入を配送スタッフや業者が担当し、相談員は立ち会いだけの事業所もある
私がケアマネとして関わっていた事業所でも、相談員さんは男性が多めでしたが、女性の相談員さんも活躍していました。2人で組んで搬入に来てくれることも多かったです。
すでに腰痛がある方は、搬入の体制が整っている事業所を選ぶことがポイントです。介護職の腰痛については、介護職の腰痛対策をまとめた記事も参考にしてください。
営業ノルマのプレッシャー
事業所によっては、売上目標や営業件数のノルマが課せられることもあります。
介護職にはなかった「数字を意識する働き方」に戸惑う方もいるでしょう。
- 毎月の売上報告が必要な事業所がある
- ノルマがプレッシャーに感じる方にはきつい面もある
- 一方で、達成することがモチベーションになる方もいる
- 業績が賞与やインセンティブに反映される事業所もある
ノルマの有無や厳しさは事業所によって大きく異なるため、面接時に確認しておくことをおすすめします。
外回り・車の運転・急な依頼が多い
福祉用具専門相談員は、社用車で利用者さんの自宅やケアマネの事業所を1日に何か所も回るのが基本です。雨の日も暑い日も外を移動するので、施設勤務とは違う体力を使います。
また、退院が急に決まったときなどは「明日までにベッドを入れてほしい」という依頼が入ることもあります。私もケアマネ時代、急ぎの依頼をして相談員さんに無理をお願いしたことが何度もありました。
- 普通自動車免許はほぼ必須(AT限定可の求人が多い)
- 担当エリアが広いと、移動だけで1日の多くを使うこともある
- 急な依頼で、予定どおりに帰れない日もある
覚えることが多く学び続ける必要がある
福祉用具は種類が多く、さらに新しい製品や技術が次々と登場します。
常に最新の情報をキャッチアップし続けなければならない点は、大変に感じる方もいるかもしれません。
- 福祉用具の種類・特徴・適合条件を幅広く把握する必要がある
- 介護保険制度の改定(2024年度の選択制など)にも対応しなければならない
- 計画書や契約書、請求業務など書類仕事も多い
ただ、介護現場で培った基礎知識があれば、覚えるスピードは未経験者よりも早いはずですよ。
それでも福祉用具専門相談員を続ける人が感じるやりがい

大変な面がある一方で、福祉用具専門相談員ならではのやりがいも大きい仕事です。自分が選んだ福祉用具で利用者さんの生活がガラッと変わる瞬間は、何ものにも代えがたい達成感があります。
- 「この手すりのおかげで一人でトイレに行けるようになった」と感謝される
- ご家族の介護負担が軽減されて「助かった」と言っていただける
- 自分の提案が「ぴたり」とハマったときのプロとしての達成感
介護現場では直接的なケアで利用者さんを支えますが、福祉用具専門相談員は「もの」を通じて生活そのものを変えることができます。
どちらも「人の役に立てる」という点では同じですね。
福祉用具専門相談員に向いている人・向いていない人

「自分に合っているかどうか」を事前に把握しておくと、転職後のミスマッチを防げます。ここまでの内容をふまえて、向いている人と向いていない人を整理しました。
このセクションでは、以下のポイントをお伝えします。
- こんな方に向いています
- こんな方には向かないかも
それでは、順番に見ていきましょう。
こんな方に向いています
以下のような方は、福祉用具専門相談員として活躍しやすい傾向があります。
介護職の経験がある方は、すでにいくつかの項目に当てはまるのではないでしょうか。
- 人と接するのが好きで、コミュニケーションを大切にできる方
- 新しい知識を学ぶことに前向きな方
- 利用者さんの小さな変化に気づける観察力がある方
- 外回りや車の運転が苦にならない方
- 「もの」を通じて問題解決をするのが好きな方
特に、「現場での直接介護は大変だけど、高齢者に関わる仕事は続けたい」という方にはぴったりの職種です。
こんな方には向かないかも
一方で、以下のような方は少しギャップを感じるかもしれません。
事前に理解しておくことで、入職後の「こんなはずじゃなかった」を防ぐことができます。
- 営業的な動き(数字を意識する働き方)が苦手な方
- 力仕事がどうしても体力的に厳しい方
- デスクワーク中心の仕事を求めている方
- 夜勤手当がなくなると生活が苦しくなる方
ただし、営業スタイルや力仕事の比重は事業所によって異なります。デスクワーク中心の働き方を考えている方は、介護職から事務職への転職についての記事も読んでみてください。
「福祉用具専門相談員が自分に合っているのか、正直まだわからない」という方は、キャリア相談で気持ちを整理してみるのもひとつの方法です。
\自分に合う働き方をプロと一緒に整理/
転職で後悔しないために|面接で確認したい5つのこと

福祉用具専門相談員の働きやすさは、事業所によって大きく変わります。同じ「福祉用具専門相談員」の求人でも、搬入の体制やノルマの有無で、毎日の大変さはまったく違います。
面接では、次の5つを確認しておきましょう。
| 確認すること | 聞き方の例 |
|---|---|
| 搬入・回収の体制 | 「ベッドの搬入は、相談員が行いますか?配送担当の方がいますか?」 |
| 担当件数とエリア | 「1人あたり何件くらい担当し、どのエリアを回りますか?」 |
| ノルマとインセンティブ | 「売上の目標はありますか?達成すると給与に反映されますか?」 |
| 車と移動 | 「社用車ですか?直行直帰はできますか?」 |
| 入社後の研修 | 「先輩に同行する期間はどのくらいありますか?」 |
厚生労働省のjob tagのアンケートでは、一人前に働けるようになるまで「1か月超〜1年以下」と答えた人が6割を超えています。同行や研修の期間がしっかりある事業所を選ぶと安心です。
介護の経験を活かせる職種は、福祉用具専門相談員だけではありません。ほかの選択肢も比べたい方は、介護職から異業種への転職をまとめた記事や、介護施設の営業職についての記事もあわせて読んでみてください。
福祉用具専門相談員への転職でよくある質問

最後に、介護職から福祉用具専門相談員への転職を考えている方からよく聞かれる質問にお答えします。気になるところだけ読んでみてください。
Q. 初任者研修を持っていれば、講習なしで働けますか?
A. いいえ、初任者研修や実務者研修だけでは講習は免除されません。介護福祉士などの国家資格がない場合は、53時間の指定講習を修了する必要があります。
Q. 資格がなくても応募できる求人はありますか?
A. 「入社後○か月以内に指定講習を修了すればOK」という求人もあります。ただし、資格がないうちは福祉用具専門相談員としての業務はできないため、受講費用を会社が負担してくれるかも確認しておきましょう。
Q. 40代・50代からの転職でも大丈夫ですか?
A. 福祉用具専門相談員の平均年齢は43.4歳(令和7年賃金構造基本統計調査)で、40代・50代で働いている方も多い職種です。介護の現場経験が長い方ほど、利用者さんやケアマネとの会話で強みを発揮できます。
Q. 女性でも続けられますか?
A. 女性の相談員さんもたくさん活躍しています。力仕事が心配な方は、搬入を配送担当が行う事業所や、2人で搬入する体制がある事業所を選ぶと続けやすくなります。
Q. 介護福祉士の資格は無駄になりませんか?
A. 無駄にはなりません。講習の免除に使えるだけでなく、資格手当が出る事業所もあります。また、福祉用具の仕事が合わなかったとしても、介護福祉士があれば介護の現場に戻る道も残ります。
介護経験を活かして、新しいキャリアを踏み出そう

ここまで読んでくださった方は、きっと「今の働き方を変えたい」「でも介護の経験を無駄にしたくない」と感じている方ではないでしょうか。
福祉用具専門相談員は、まさにその両方をかなえられる仕事です。ただし、力仕事や営業、給料の変化もあるので、良い面ときつい面の両方を知ったうえで選んでくださいね。
この記事のまとめ
- 介護現場で培った経験・知識がそのまま強みになる
- 介護福祉士を持っていれば、53時間の講習なしですぐに転職できる
- 平均年収は402.7万円。ただし夜勤手当・処遇改善の扱いで手取りが下がる人も
- 力仕事・営業・外回りがきついと言われるので、面接で体制を確認する
- 「もの」を通じて利用者さんの生活を変えるやりがいがある
「福祉用具に限らず、自分に合ったキャリアの方向性を整理したい」という方は、キャリア相談を活用してみるのもひとつの方法です。
「どうしたいかわからない」という段階からでも、専門のコーチと一緒に気持ちを整理することができます。どんなサービスかは、coacheeについて詳しく書いた記事でも紹介しています。
\オンラインで気軽にできるキャリア相談サービス/
介護の経験は、あなたが思っている以上に価値のあるものです。
まずはどんな選択肢があるのか、自分のペースで調べてみるところから始めてみてくださいね。



