介護職員として働く方の中には、将来のキャリアアップとして施設や事業所の管理職を目指している方もいるのではないでしょうか。
介護業界の管理職は、その事業形態や規模により働き方が異なります。管理職の役割や働き方、必要なスキルを理解して早めに準備しておくことをおすすめします。
今回の記事では「介護職が管理職を目指すには?必要な資格や要件を詳しく解説」と題して解説します。将来の道筋を考えるための参考にしてください。
介護業界の管理職とは?
介護業界での管理職は、施設や介護事業所の全体を統括する責任者で「施設長」「ホーム長」「所長」などと呼ばれています。
また、入居施設などでは「介護リーダー」「サービスリーダー」「主任」などと呼ばれる、介護現場をまとめる役職が別に配置されているのが一般的です。
介護サービスにおける管理職の役割は事業形態や規模によりさまざまです。経営者が管理者になっているケースもあれば、小規模な事業所では管理者自身が介護現場と兼務しながら勤務しているところもあります。
いずれにせよ施設や介護事業所のトップであり、全体のマネジメント業務を行う役割は変わりありません。
管理職になるために必要な資格や要件
介護保険サービスを提供する施設や事業所の管理職に就くためには要件があり、施設や事業所により異なります。
管理者になるためにはどのような要件を満たせば良いのか確認しておきましょう!
管理職になるために資格要件がある施設
現在働いている職場での管理職を目指している方は、資格要件を確認しておくことが大切です。頑張って働いていたのに、働いている職場で管理職に昇進できないケースも考えられます。
ここからは、管理職になるために資格要件がある主な施設をご紹介します。
特別養護老人ホーム
特別養護老人ホームのトップは「施設長」です。
施設長になるための要件は以下のいずれかを満たさなければなりません。
- 社会福祉主事の要件を満たす者
- 社会福祉事業に2年以上従事した者
- 社会福祉施設長資格認定講習会を受講した者
資格や経験のない方は「社会福祉施設長資格認定講習会」を受講すれば特別養護老人ホームの施設長になることが可能です。講習会は全国社会福祉協議会の中央福祉学院が主催しており、通信学習とスクーリング(集合研修)により構成されています。
介護老人保健施設
介護老人保健施設の管理者は原則、都道府県知事の承認を受けた医師に管理させなければならないとされています。これは、介護老人保健施設が家庭への復帰を目指し、医師による医学的管理の下に提供される施設サービスに該当するからです。
ただし、都道府県知事の承認を受けた場合は、医師の資格を持たなくても管理者になることが可能です。
介護療養型医療施設
介護療養型医療施設は医療的ケアが中心であり、あくまでも医療機関という位置付けのため、管理者になれるのは医師のみになります。
介護保険サービスを提供する施設のため介護職も活躍できる職場ですが、将来施設長になりたい方は介護療養型医療施設では管理者になれないことを覚えておきましょう。
グループホーム
グループホームの管理者は3年以上の認知症介護に従事した経験があり、厚生労働大臣が定める研修を修了した者が常勤専従する必要があります。
厚生労働大臣が定める研修とは、2日間の「認知症対応型サービス事業者管理者研修」です。認知症高齢者の方への介護サービスに関する知識や技術のほか、事業所運営についても学びます。
管理職になるための資格要件がない施設・事業所
管理職になるためには経験や資格がある方が有利なことは言うまでもありませんが、特に要件が定められていない施設・事業所もあります。
有料老人ホーム
有料老人ホームの施設長になるための資格要件は特に定められていません。そのため、無資格で介護現場での勤務経験がない方が施設長になれます。全く違う業種でのキャリアによりマネジメント能力を期待され、施設長に抜擢されるケースも少なくありません。
もちろん介護現場での経験がある方が有利なため、介護職の方が施設長になれる可能性は大いにあります。
訪問介護サービス
訪問介護サービスの管理者にも求められる要件はありません。管理に支障がなければ併設の事業所でケアマネジャーやサービス提供責任者との兼務も可能です。そのため、訪問介護事業所で配置が義務付けられているサービス提供責任者と兼務している管理者も多くいます。
サービス提供責任者には資格要件があり、介護福祉士か介護福祉士実務者研修を終了していなくてはなりません。そのため管理者もこれらの資格要件を満たしている方が多いでしょう。
訪問介護事業所で管理者になるには、まずサービス提供責任者を目指すのも一つのルートです。
デイサービス
デイサービスも管理者になるための必要な資格要件はありませんが、介護経験者や資格所有者が優遇されます。
デイサービスの管理者も生活相談員・機能訓練指導員・看護職員・介護職員との兼務が可能なため、これらの資格所有者が管理者として兼務するケースが多いでしょう。
介護業界の管理職の仕事内容
介護経験や資格があるからといって誰でも管理職にはなれません。施設全体のトップになるにはさまざまなスキルと幅広い対応能力が必要です。
管理職の仕事内容を確認しておきましょう。
ご利用者の管理や相談対応
ご利用者への直接介護は介護職員が行いますが、介護現場において適切な介護サービスが提供できているかを確認し、サービス向上に努めるのは管理職の役割です。
ご利用者の体調不良・事故・クレームなどに対応し、迅速かつ適切な判断が求められる場面もあります。対応に苦慮するご利用者や終末期のご利用者様など、難しい事例に対してもスタッフと話し合いながら対応しなければなりません。
管理者として適切な判断をするには、日頃からご利用者の日々のご様子や介護記録、ケアプランなどを確認し、お一人おひとりの状況を把握しておくことも大切です。
スタッフの採用・育成・シフト管理
人材不足で悩む介護業界においては、スタッフ採用や育成も重要な責務です。スタッフの採用面接や研修などを積極的に行い、優秀な人材を確保しなければなりません。
日頃の勤怠チェックやシフト管理のほか、施設介護であれば介護リーダーなどと相談しながら人員配置や業務プログラムを検討する場合もあります。
スタッフマネジメント
スタッフがモチベーションを保ちながら仕事ができるようにするためには、目標設定管理を行い定期的な面談を行うことも大切です。課題のあるスタッフには指導しなけばならない場面もあるでしょう。
介護の仕事は体力的にも精神的にもきつく、ご利用者やご家族との関わりやスタッフ同士の関係性で悩んでしまうことも少なくありません。スタッフ一人ひとりの働きぶりを注視し、メンタルケアを行うこともあります。
また、風通しの良い職場になるようにハラスメント研修などを定期的に行うなど、スタッフの教育も大切です。離職者が増えないように、働きやすい職場環境を整えることが健全な施設運営のためにも重要になります。
施設の運営管理
管理職は施設が適切な運営を続けるために、介護保険法を正しく理解し法令遵守に努めなければなりません。
介護保険法は定期的に改正されるため、遵守すべき法令等は最新の情報をチェックしておくことが大切です。施設や事業所が行政に届けている内容に変更があった場合には変更の手続きも必要です。
介護保険法の他にも高齢者福祉に関わる制度やサービスを把握しておき、行政と連絡調整するケースもあります。
また、施設の運営方針を策定して全てのスタッフと共有し、サービスレベルを維持・向上することも欠かせません。施設の経営が赤字にならないように収支をチェックし、新規ご利用者獲得に努めることも重要な責務です。
収支の管理
施設内で使った経費・人件費・ご利用者の利用料・介護保険請求など収支に関わることも管理職の仕事です。介護事務員がいる場合は実務の一部を任せ、その確認や利益管理は施設長が担います。
無駄な経費がないか確認したり、売り上げが落ちていないかなどをチェックしたり、施設全体の収支をコントロールして適切な施設運営を目指します。
営業・広報活動
施設経営のためには収入の確保が欠かせません。常に利用率をキープするためには、新規ご利用者の獲得を目指し、営業や広報活動を行うのも施設長の重要な役割の一つです。
他事業所への営業活動や、イベント・見学会などを開催し施設をアピールする場を設けることもあります。広告を打ったりホームページを工夫したりさまざまな戦略を練って募集活動を続けます。地域活動に積極的に参加し、地域に受け入れられる施設を目指すことも大切です。
集客にはそもそも、常に施設のサービスレベルの向上を目指し、魅力的な施設を作りをすることが大切ですね!
介護業界の管理職に求められるスキル
介護業界の管理職の役割は多岐にわたります。管理職を目指すにはどのようなスキルが求められるのでしょうか。
コミュニケーションスキル
介護業界はすべてのスタッフにおいてコミュニケーションスキルが重要ですが、管理職にはさらに高いコミュニケーション力が求められます。管理職はご利用者・ご家族・スタッフはもちろん、外部の事業所や業者などさまざまな人と関わるポジションです。
直接介護をする機会が少ない管理者でも、ご利用者やご家族が満足できるサービスを提供できているかに心を配り、積極的に語りかけていくことが満足度を上げることにつながります。介護職員に対しても、悩みや課題を解決するために常に寄り添う気持ちが大切です。
管理者と言えば施設の「顔」です。管理者の雰囲気そのものが施設の雰囲気となり全体に伝わります。外部の事業所や業者からの印象を決めるのも管理者の人柄と言っても過言ではありません。
コミュニケーションスキルはあらゆる職場でも大切なスキルです。日頃からコミュニケーションスキルを高めるための意識をしておきましょう。
リーダーシップ
施設全体のトップとなる管理職には、リーダーシップが欠かせません。同じ目標に向かって進むためには、自らの思いをしっかり職員に伝え導いていく必要があります。自らの発言や行動が職員に影響を与えられるような振る舞いが大切です。
的確な指示を出しながら施設全体を取りまとめることも大切ですが、自らが現場に出て積極的にご利用者と関わってお手本を示すような行動力もスタッフの心をつかみます。
高齢者介護や介護保険に関連する知識
介護業界の管理職は経験や資格がない方がなれる施設や事業所もありますが、無知では務まらないため知識習得のための自己研鑽は必須です。高齢者介護や介護保険に関連する知識がなければ、介護の現場で発生する日々のトラブルや課題の対応に苦慮するでしょう。
介護保険法は定期的に改正され、介護に関する情報も日々アップデートされていきます。常に新しい情報に耳を傾けながら正しい情報をキャッチしておかなければなりません。常にコンプライアンスを意識し、無知が原因で法令違反を犯してしまうことがないように幅広い知識を持っておくことが大切です。
管理職を目指すには求められる要件を理解しておこう
今回の記事では介護業界の管理職を目指すための要件や管理職の仕事内容、求められるスキルなどを解説しました。
管理職の役割や就任できる要件は、その施設の事業形態によりさまざまです。目指すスタイルに合わせて必要な経験やスキルを習得しておくなどの準備が必要です。現在勤務している職場では、管理職になれる見込みがないのであれば早めに転職を考えておくのも一つの方法かもしれません。
将来を見据えてしっかりとキャリアアップの道筋を描いておきましょう!