訪問介護は、利用者の暮らしの場に入り込んでサポートを行う仕事です。施設とは違い、一人ひとりの生活スタイルや家庭環境に寄り添いながらケアを行うため、柔軟性と個別対応力が求められます。
訪問介護の仕事は自由度の高さや人間関係のストレスが少ないといった理由で選ばれる一方、実際に働いてみてギャップを感じ、辞めてしまう人も少なくありません。
この記事では、訪問介護を辞める理由としてよく挙げられる点や、この仕事に向いている人、事前に確認すべきポイントについてご紹介します。

実際にケアマネジャーとしてヘルパーさんやサ責さんの現状を見てきた、リアルな視点も交えてお伝えしますね!
訪問介護を辞める人が増えている背景
一見魅力的に見える訪問介護ですが、実際に働いてみると「思っていたのと違った」と感じることもあります。人手不足やサポート体制の課題など、現場での問題が離職の原因になっているようです。
思ったよりハードな業務内容
訪問介護では、1人での対応が基本です。調理・掃除・入浴介助など、幅広い業務を限られた時間内にこなす必要があり、常に時間に追われるプレッシャーを感じることがあります。
特に複数の業務を短時間で切り替える柔軟さが求められるため、慣れるまでは心身ともに負担を感じることもあります。また、施設のように福祉用具や介助設備が整っていない利用者宅では、動線や環境が異なり介護がしにくい場面も多く、身体的な負担が大きくなる要因のひとつです。
一人で抱える負担の重さ
緊急時の対応や利用者とのトラブルなども、まずは一人で対処しなければならない状況が多く、孤独感やプレッシャーを感じて辞める人もいます。
例えば転倒や急な体調不良など、現場判断を求められる場面では責任の重さを痛感することも。

相談相手がすぐ近くにいないという環境にストレスを感じるケースも多く見られます。
思ったより稼げない現実
訪問介護は、特に非常勤や登録ヘルパーといった非正規雇用では時給制が多く、移動時間やキャンセルなどで拘束時間の割に収入が少なくなることもあります。
正社員の場合は月給制が一般的ですが、それでも訪問件数によって忙しさが大きく変わるため、安定した働き方とは言いにくい面もあります。
非常勤の場合は訪問件数がそのまま収入に直結するため、スケジュールの空きや急なキャンセルがあると、月収が大きく下がるリスクもあります。こうした収入の不安定さから、別の職場を探す人も少なくありません。
移動の多さと体力的な負担
1日に複数の利用者宅を訪問するため、移動時間が長くなることもあります。エリアによっては訪問先が遠方に分散しており、次の訪問先まで自転車やバイクで長距離を移動しなくてはなりません。
特に夏場や雨天時などの天候条件が重なると、移動そのものが大きな体力的負担となり、疲労の蓄積から辞めてしまう人もいます。効率的に回れないストレスや、時間に追われるプレッシャーも加わり、継続が難しいと感じる方がいるのも現実です。
利用者との相性やハラスメント
1対1の介護が基本となる訪問介護では、利用者との相性が非常に重要です。指示が厳しい方や介助拒否のある方との関係に疲弊し、心身のバランスを崩して辞める例もあります。
加えて、利用者やその家族からの暴言、セクハラ、不当な要求など、ハラスメントに該当する行為に悩まされるケースも報告されています。こうした問題に対して事業所が十分に対応してくれないと、介護職員が孤立感を深め、離職につながることがあります。
コミュニケーションの難しさに加え、価値観の違いや家庭内の雰囲気に気を遣い続けることに疲れてしまうという声も少なくありません。
訪問先の住環境の悪さに戸惑うことも
訪問介護では、利用者宅の環境がそのまま職場になります。しかし中には、部屋が極端に散らかっていたり、衛生状態が悪いケースも存在します。こうした環境での作業は、身体的な負担に加え、精神的にもストレスとなることがあります。
また、カビや動物の毛、臭いなどに敏感な人にとっては、健康上のリスクを感じることも。事業所が定期的なチェックを行わない場合、こうした問題が長期的に続き、結果的に離職の原因になることもあります。
訪問介護が向いていない人の特徴
次のような特性がある人は、訪問介護に不向きと感じやすい傾向があります。
一人で判断・行動するのが不安な人
訪問介護は基本的に単独での業務となるため、その場で判断し、迅速に行動しなければならない場面が多くあります。誰かにすぐ相談できない状況での判断が求められるため、自信を持って決断する力が求められます。不安が強い人には大きなストレスになる可能性があります。
特に介護職としての経験が浅い方にとっては、利用者の状態変化に気づく力や、的確な対応を一人で判断することは大きな負担となりがちです。判断に迷いが生じたときにすぐ相談できる環境がないことで、自信を失い、離職につながってしまうケースも見受けられます。
急な予定変更に対応するのが苦手な人
利用者の体調や家庭の都合で、訪問スケジュールが急に変更になることも少なくありません。たとえば、急な入院や家族の事情によって、当日にキャンセルが入る場合もあり、それに応じて1日のスケジュールを組み直す必要が出てきます。
また、事業所の都合によるシフト変更もあり得ます。特に人手が足りないときには、予定にない訪問を急遽お願いされることもあり、対応力が求められます。
こうした突発的な変更に柔軟に対応する力が求められるため、予定が変わることに抵抗がある人や、事前に計画を立てて動きたいタイプの人にとっては、大きな負担となることがあります。予定通りに進まないことに強いストレスを感じる方には、精神的なプレッシャーとなりやすいでしょう。
対人ストレスに敏感な人
訪問介護では1対1の密なコミュニケーションが必要となり、時には利用者やその家族との価値観の違い、厳しい言動に直面することもあります。長期間同じ利用者を担当する場合、関係が深くなる一方で、逆に距離のとり方が難しくなることもあるでしょう。
距離感を上手に保ちつつ、必要な配慮や適度な感情のコントロールが求められるため、人間関係のストレスを感じやすい方には厳しい環境になる可能性があります。加えて、訪問先での出来事について気軽に相談できる相手がいないと、悩みを抱え込んでしまい、精神的な負担が蓄積してしまうこともあります。
安定した月給を求める人
非常勤や登録ヘルパーとして働く場合、訪問件数や稼働日数によって収入が大きく変動します。収入を一定に保つことが難しいため、毎月決まった額の給与を求める方には不向きです。
一方、特別養護老人ホームや有料老人ホームなどの施設で正社員として働く場合は、月給制に加えて夜勤手当や処遇改善手当などの各種手当が支給されることが一般的で、結果的に訪問介護よりも高収入になる傾向があります。安定した生活を望む場合は、そうした施設勤務も視野に入れて検討するのがよいでしょう。
訪問介護に向いている人の特徴

訪問介護には厳しさもありますが、環境や条件が合えばやりがいを感じながら長く働ける職種でもあります。
ここでは、訪問介護の仕事に適性があると考えられる人の特徴を紹介します。
スキマ時間を活用して働きたい人
訪問介護は短時間勤務や週に数日の稼働も可能なため、家庭や子育て、他の仕事と両立しながら働きたい人に向いています。午前のみ・午後のみといった時間帯に合わせて働くことができ、自分のライフスタイルに合わせて無理なくシフトを組める点が大きな魅力です。
ご利用者とマンツーマンで関わりたい人
施設介護とは異なり、訪問介護では基本的に1対1で利用者と向き合います。そのため、じっくりと信頼関係を築きながら介護に携わりたい人にはぴったりの環境です。利用者の生活の背景を深く理解し、きめ細やかな対応ができることにやりがいを感じる方に向いています。

「介護が必要になっても最後まで自宅で過ごしたい」という利用者の気持ちに寄り添い、その希望を支える役割を担えるのも、訪問介護ならではの意義ある仕事です!!
家事スキルを活かしたい人
訪問介護では調理・掃除・洗濯といった生活援助も多く求められるため、家庭で培った家事スキルが大いに活かされます。例えば、手際よく食事を作ったり、効率的に掃除をこなしたりといった日常の家事力が、そのまま仕事の質につながることが多いです。
特に高齢の利用者は、家庭的な雰囲気や気配りに安心感を覚えるため、日常の延長で丁寧に対応できる人材が求められます。専門的な知識だけでなく、普段の生活の知恵や段取りの良さ、相手を思いやる心配りが重宝される職場であり、自信を持って「家庭的なケア」ができる方は、訪問介護の現場で大いに活躍できるでしょう。
介護職経験が長い人
訪問介護では一人での対応力や柔軟な判断力が求められるため、介護職としての経験がある方には特に向いています。複数の現場をこなす中で培ってきた応用力や観察力を活かして、より質の高いケアを提供することができます。利用者のちょっとした体調の変化に気づく感覚や、家庭環境に応じた対応の引き出しを持っていることも、経験者ならではの強みです。こうした経験値があることで、精神的なゆとりを持ちながら仕事に臨むことができる点も大きな利点です。
介護士としてのスキルアップを目指したい人
訪問介護は1対1の対応を通じて、観察力やコミュニケーション力、自己判断力など、多くの実践スキルを磨くことができます。また、一定の経験を積めばサービス提供責任者(サ責)へのキャリアアップも可能で、訪問介護の現場でより責任ある立場として活躍できるようになります。
さらに、在宅介護のヘルパーやサ責としての経験は、介護保険制度やケアマネジメントの理解を深めることにもつながるため、将来的にケアマネジャーを目指す人にとって非常に有効なルートとなります。将来のキャリアを見据えて、着実にステップアップしたい人には、訪問介護の現場での経験が貴重な財産となるでしょう。

私はずっと施設介護をしていたのでケアマネになった当初は制度の理解に苦戦しました!
働く前に確認しておきたい職場選びのポイント
訪問介護に就く前に、次の点をよく確認することが、早期離職を防ぐポイントになります。
業務内容の詳細とサポート体制
生活援助だけでなく身体介護も含まれるため、業務内容を事前にしっかり確認しておくことが大切です。身体介護には、入浴介助や排泄介助、体位変換など、体力と技術が求められる業務も多く含まれています。
自分が対応可能な範囲を把握した上で、どのような業務が想定されるのか、事前に事業所に確認することが安心して働くための第一歩です。
また、困ったときのフォロー体制が整っているかどうかも、長く働く上で欠かせないポイントです。特に単独で訪問する業務では、トラブル時の対応や緊急時の連絡体制が明確であることが重要です。
新人職員向けの研修制度や、定期的なミーティング・同行サポートの有無なども、働く前に確認しておくと安心です。
勤務条件と収入の見込み
訪問件数や報酬単価、キャンセル時の補償の有無など、具体的な条件を事前に把握しておくことで、納得して働ける環境かどうかを冷静に判断できます。
加えて、訪問の時間帯(早朝・夕方・土日など)や1件あたりの所要時間、移動手段の指定があるかなども確認しておくと、実際の業務のイメージがしやすくなります。
また、報酬体系については基本時給のほかに加算手当や特定処遇改善加算の支給対象かどうかも確認しておくと、収入面での安心材料となります。契約前に細かい条件を明確にしておくことで、後々のトラブルや不満の防止にもつながります。
訪問介護を続けるために大切な心構え
訪問介護は、一見自由度が高く魅力的に見える仕事ですが、実際には一人での業務や収入の不安定さ、利用者との人間関係など、現場特有の大変さがあります。緊急時の判断や対応を一人で行う必要があり、精神的な負担を感じる場面も少なくありません。
また、時間管理の厳しさや、収入の変動に戸惑うこともあります。こうした実情を理解せずに現場に入ると、ギャップを感じやすく、離職につながることもあります。

事前に勤務条件やサポート体制を確認し、自分に合った働き方かどうかをしっかり見極めることが重要です!
訪問介護の特徴を理解した上で選択することが、長く続けるうえでのカギとなります。