転職活動において、面接官からよく尋ねられる「転職理由」。
特に介護業界では、慢性的な人材不足や職場環境の課題が背景にあり、退職理由が注目されやすい傾向にあります。
そのため、本音を話すことへの不安から嘘をつきたくなる場合もあるでしょう。

しかし、嘘をつくことにはリスクが伴います!
本記事では、介護職での転職理由における嘘のリスクや、本音を上手に伝える方法について解説します。
嘘の転職理由はなぜ危険なのか?
転職活動において、自身のキャリアを良く見せたいという気持ちは理解できますが、嘘の転職理由を語ることは、将来的に大きなリスクと不利益をもたらす可能性があります。
具体的に見ていきましょう!
嘘がバレる可能性
介護業界の採用担当者は多くの応募者と接しており、詳細な職務経歴やスキルについて深く掘り下げた質問をすることが一般的です。応募書類や面接での回答に矛盾点があると、経験豊富な採用担当者には容易に見抜かれる可能性があります。
特に介護の現場では、具体的な業務経験や資格、過去の勤務先などが重視されるため、曖昧な表現や事実に反する説明は、後々の確認で露呈するリスクが高いと言えるでしょう。例えば、「多様な介護スキルを習得してきた」と主張しても、具体的な経験や資格について質問された際に明確に答えられない場合、不信感を持たれるのは避けられません。

介護業界は地域の連携が密な業界です。
前職の同僚や上司とのつながりが業界内で存在する場合も多く、意図せず嘘が明るみになることも考えられます。
信頼関係の崩壊
採用選考の過程で嘘が発覚した場合、内定取り消しとなる可能性は非常に高いです。もし入職後に嘘が判明した場合、雇用契約解除につながることもあります。
介護現場は、利用者の命や安全に関わる責任の重い仕事であり、そこで働く職員間の信頼関係は業務遂行の根幹をなします。一度嘘をついて信頼を失ってしまうと、上司や同僚からの協力や指導を得ることが難しくなり、円滑なチームワークを築けなくなるでしょう。
結果として、自身の仕事のパフォーマンスが低下するだけでなく、職場全体の雰囲気悪化にもつながりかねません。信頼は日々の積み重ねによって築かれるものですが、一度崩れてしまうと修復は非常に困難です。
自分自身へのストレス
嘘の内容を常に記憶し、矛盾が生じないように振る舞うことは、精神的な大きな負担となります。些細な言動から嘘が露呈するのではないかという不安に常にさいなまれ、本来の業務に集中することが難しくなるかもしれません。
「あの時、こう言ったから、今回はこう言わなければならない」といった思考回路は、心身を疲弊させ、ストレスが蓄積されていきます。その結果、後悔の念に駆られ、早期離職を考えるようになるケースも少なくありません。嘘は一時しのぎにはなるかもしれませんが、長期的に見ると自分自身を苦しめることになります。
なぜ嘘をつきたくなるのか?
転職活動においては、自身のキャリアやスキルを最大限にアピールしたいという心理が働くのは自然なことです。特に、介護業界特有の背景から、以下のような理由で嘘をつきたくなる状況が生まれることがあります。
ネガティブな印象を避けたい
前職の退職理由が、人間関係のトラブルや労働条件への不満、体力的な負担など、ネガティブな内容である場合、「正直に話すと選考に不利になるのではないか」と感じてしまうことがあります。面接官に「協調性がない」「我慢が足りない」といったマイナスの印象を与えたくないという心理から、当たり障りのない理由や、実際とは異なるポジティブな理由を捏造してしまうことがあります。しかし、表面的な取り繕いは、経験豊富な面接官には見抜かれる可能性があり、かえって不誠実な印象を与えてしまうこともあります。
採用されたいという焦り
慢性的な人手不足が叫ばれる介護業界ですが、希望する条件や待遇の求人が必ずしもすぐに見つかるとは限りません。「早く次の仕事を見つけたい」という焦りから、自分のスキルや経験を実際よりも誇張したり、事実と異なる説明をしたりしてしまうケースがあります。
また、選考が進む中で、他の応募者と比較して自信を失い、「少しでも有利に進めたい」という気持ちが、結果的に嘘という手段に走らせてしまうことも。しかし、焦りは禁物であり、嘘は後々大きな問題を引き起こす可能性はらんでいます。
他人と比較してしまう心理
転職活動中には、どうしても他の応募者の経歴やスキルが気になり、自分自身と比較してしまうことがあります。「自分は経験が浅いから」「特別なスキルがないから」といった劣等感から、「他の人よりも良く見られたい」という気持ちが強くなり、本来の自分を偽ってしまうことがあります。
SNSやインターネット上には、華やかなキャリアを持つ人の情報が溢れており、そうした情報に触れることで、焦りや不安が増幅し、嘘をつくという誘惑に駆られることもあるでしょう。しかし、他者との比較ではなく、自身の強みや経験を正直に伝えることが、結果的に自分に合った職場を見つけるための近道となります。
嘘をつかず本音を伝える方法
ネガティブな退職理由であっても、伝え方を工夫することで、採用担当者に良い印象を与えることは可能です。

嘘をつくのではなく、以下のポイントを押さえて本音を伝えるように心がけましょう。
ネガティブな理由をポジティブに言い換える
退職理由がネガティブな内容である場合でも、単に不満を述べるのではなく、前向きな言葉に置き換えることで、成長意欲や改善意識を示すことができます。
具体的な言い換え
例:「人間関係が辛かった」→「チームワークを重視し、互いに尊重し合える環境で、より良いケアを提供したいと考えています。」
例:「夜勤が体力的に厳しかった」→「日勤帯で、利用者様一人ひとりとじっくり向き合い、質の高いケアを提供することに注力したいと考えています。」
このように、過去の経験から得た学びや、今後のキャリアに対する希望を具体的に伝えることで、ネガティブな印象を払拭し、ポジティブな姿勢を示すことができます。
学びや成長意欲を添える
退職理由を説明する際に、その経験から得た教訓や、今後の仕事に活かしたい学びを付け加えることで、主体性や成長意欲をアピールすることができます。
具体的な例
例:「前職では、多忙な毎日の中で、自身の体調管理の重要性を痛感いたしました。今後は、生活リズムを整え、より健康な状態で、利用者様のケアに集中できる環境で働きたいと考えております。」
例:「以前の職場では、新しい介護技術の導入が遅れており、もっと積極的に知識やスキルを吸収し、質の高いケアを提供できる環境で成長したいと強く感じました。」
このように、過去の経験を反省として捉え、それを未来への糧にしようとする姿勢を示すことが重要です。
具体的なエピソードで補強する
抽象的な理由だけでなく、具体的なエピソードを交えることで、話に説得力が増し、採用担当者にあなたの考えや価値観をより深く理解してもらうことができます。
具体的な例
例:「以前、認知症の利用者様とのコミュニケーションで困難を感じた経験から、認知症ケアに関する専門的な知識を深めたいと強く思うようになりました。貴施設では、認知症ケアに力を入れていると伺い、ぜひその環境で学びたいと考えております。」
例:「前職で、利用者様の笑顔を間近で見ることができた際に、大きなやりがいを感じました。貴施設のアットホームな雰囲気の中で、利用者様一人ひとりに寄り添った、温かいケアを提供したいと考えております。」
具体的なエピソードは、あなたの人間性や仕事への取り組み方を伝える上で非常に有効な手段です。
嘘によるリスクとトラブル事例
転職理由に嘘をつくことは、短期的な選考を有利に進めるように見えるかもしれませんが、長期的にはさまざまなリスクやトラブルを引き起こす可能性があります。
スキルミスマッチ
「リーダー経験あり」と履歴書や面接で偽った場合、入職後にリーダーとしての役割を期待され、実際には経験不足から業務を円滑に進めることができず、周囲の信頼を失うことがあります。
また、利用者や他の職員とのコミュニケーションにおいても、適切な指示や判断ができず、現場の混乱を招く可能性もあるでしょう。結果として、自身の評価が下がるだけでなく、職場全体の業務効率を低下させる原因となりかねません。
社会保険履歴でバレる
転職回数や期間をごまかしても、採用企業が社会保険の加入履歴を確認することで、容易に発覚する可能性があります。特に、短期間での離職を隠そうとしても、社会保険の記録はつながっているため、虚偽の申告はすぐに露呈します。このような経歴詐称は、事業所に不信感を与え、内定取り消しや入職後の解雇につながる重大な理由となります。
入職後のストレス増加
嘘をついて入職した場合、実際の仕事内容や職場の雰囲気が、事前に聞いていた話や自分で作り上げたイメージと大きく異なることがあります。「こんなはずではなかった」というギャップは、大きなストレスとなり、早期離職の原因となります。また、嘘の内容を意識しながら働くことは精神的な負担が大きく、本来の能力を発揮することが難しくなるでしょう。
結論:正直さと前向きさが成功への鍵
介護職の転職活動において、転職理由に嘘をつくことは、短期的な利益にしかなりません。長期的に見れば、信頼を失い、精神的な負担を抱え、早期離職につながる可能性が高いと言えます。
大切なのは、過去の経験を真摯に振り返り、そこから得た学びや今後の希望を、正直かつ前向きに伝えることです。そして、あなたの価値観や考え方を理解し、受け入れてくれる職場を選ぶことが、転職を成功させるための重要な鍵となります。

自信を持って、あなた自身の言葉で、新しいスタート地点への思いを伝えてください。